篠塚和典の凄さが分かる名言・語録集!流し打ちの天才名打者のバッティング理論から努力論まで
プロ野球で最初に「安打製造機」と呼ばれたのは2000本安打の最年少記録を持つ榎本喜八です。また3000本安打の張本勲もその称号に相応しい選手といえるでしょう。このふたり以降もファンたちに愛され「安打製造機」と名付けられた選手は各チームに存在します。読売ジャイアンツでそう呼ばれた巧打の選手が、篠塚和典(1992年までは利夫)です。
左打者がレフトに流し打った打球は、通常スライス回転がかかってファウルになりやすいのですが、篠塚の打球は三塁線と並行するように飛んで行くという、まさに芸術品といえる打撃を見せてくれました。また篠塚が使っていた細身のバットは、その後、イチローが使い続けるバットの原型となっています。
守備も華麗で、広い守備範囲と球際の強さを持ち、人気チームの顔のひとりとして、女性からも支持されました。
今回は篠塚和典の凄さが分かる名言や語録を紐解き、流し打ちの天才のバッティング理論から努力論にまで迫ります。
篠塚和典のプロフィール詳細
まずは篠塚和典の経歴を追ってみます。
1957年7月16日生まれ、東京都豊島区出身。育ったのは千葉県の銚子市で、銚子商業高校では甲子園に2度出場し、千葉県出身の長嶋茂雄監督の希望もあり、1975年、読売ジャイアンツにドラフト1位で入団。
1979年から1軍で結果を残しはじめ、1980年にはレギュラーに定着。1981年、阪神タイガースの巧打者で、篠塚も憧れてフォームを真似していた藤田平と激烈な首位打者争いを繰り広げ、惜しくも首位打者は逃しましたが.357という高打率を残し、そこから5年連続で打率3割以上を記録します。
1984年と87年に首位打者を獲得。セリーグを代表するアベレージヒッターとしての名声を得ると同時に、抜群の守備力も見せ、二塁守備の名手として高い評価を得ます。
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1990年代に入ると腰痛を悪化させ、出場機会を減らして行きますが、1994年までプレーし、引退。プロ通算18年間で1696安打、92本塁打、打率.304。首位打者2回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞5回。
篠塚が現役の間に、ジャイアンツは6度のリーグ優勝を成し遂げ、3度の日本一に輝き、彼はその栄冠に大きく貢献しました。
引退後はジャイアンツのコーチやWBC日本代表コーチも歴任しました。
私が選ぶ、篠塚和典の凄さがわかる名言・語録
【名言・語録その1】
「僕も一緒にやめます」
1980年10月21日に長嶋茂雄監督が電撃的に退陣します。篠塚をプロに導いてくれた恩人でもあり、同郷の英雄でもある長嶋に、まだ2軍選手に過ぎなかった篠塚は、電話をして上記のように訴えたそうです。
当時の長嶋茂雄はジャイアンツのみならず、ミスタープロ野球というべき存在でした。戦前から野球で一番人気だったのは東京六大学リーグであり、その大スターだった長嶋のプロ入りが、戦後に「巨人、大鵬、卵焼き」と言われるジャイアンツ人気の源泉でした。
その大看板の事実上の解任は、篠塚のようなまだプロ2年目の選手が動揺するほどの大事件だったのです。
篠塚のこの言葉に長嶋は怒ったそうです。「ミスターが白と言えば白、黒と言えば黒」という篠塚だけに、そこは素直に野球をやめることはしませんでした。
長嶋が篠塚のバッティング投手をしてくれた時、初球の真ん中を見逃したら、次に頭の上に投げてきて「なぜ1球目のボールを振らないんだ」と怒られ、更に「見逃し三振はするな」と言われたことで、篠塚の初球から積極的に狙い、四球よりも際どい球をうまくさばく打撃スタイルが生まれたのです。
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【名言・語録その2】
「俺がセカンド2年目で小学生程度というなら、原は幼稚園以下だと思った」
1981年に期待の大型ルーキー原辰徳がジャイアンツに入団。チーム方針で原を二塁手で起用しようということから、レギュラー二塁手の座をつかんでいた篠塚が、ポジションを追われることになりました。しかし負け惜しみではなく、篠塚には自信があったようです。
「いきなり守備はうまくなりません。守備の成長というのは、レギュラーとして出た年数とほぼイコールです。他球団のバッターの癖や味方ピッチャーの投球スタイルなどから導き出される守備。そういったものは、何年も試合に出ていないと自然と頭で整理できないし、体だって反応してこないものなんですよ」
打撃だけでなく、守備の名手でもあった篠塚ならではの指摘です。
また面白いのは、完全試合男の槙原寛己によれば、スライダーの投げ方は篠塚から教わったのだそうです。篠塚が遊びで投げていたスライダーの切れに目をつけたのだとか。高校時代は三塁手だった篠塚ですから、どうやってスライダーを覚えたのかわかりませんが、器用だったのは間違いないようです。
その器用さと経験と考える力で、篠塚は長らくジャイアンツの二塁手というポジションを死守したのでしょう。
【名言・語録その3】
「詰まった時も、目いっぱい振ったら折れてしまう。ただ、力を抜きながら折れない感じでいくと、ちょうど内野の頭を越える打球になったりする」
逆方向への流し打ちが上手かった篠塚ですが、その極意は確率です。相手のコースや球速に合わせて、力を入れるパーセンテージをわざと下げ、バットにコンタクトする確率を上げるというものです。
「ピッチャーの一番速いボールを自分で描いて、その速さでくれば70、80%で振っていくけど、遅いボールというのは抜かれるので、思い切りは振れない。そこを自分の中で60、70%くらいでバットをポンと出していくだけで、ミート率が上がる」
「抜かれた時とか、難しいコースに来た時にはちゃんとした形では打てないので、いかにその時に確率よくバットでボールを捉えるかが大事。だから練習の時から多少、崩された時に打つ練習をしておかないと」
プロ野球選手の中には、打撃フォームが崩れるのを嫌がって、無理して当てるよりも空振りする方がいいという打者もいます。しかし篠塚はどんな形でもヒットにする打法を選びました。
どちらが良い悪いではなく、そこがプロの個性でもあり、プロの技でもあるのだと思います。
名言からの学び
・恩師の言葉がひとつの道となることがある。
・自信は日々の積み重ねの先にある。
・結果を出すためのアプローチはひとつではない。
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