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須江航監督の凄さが分かる名言・語録集!仙台育英高校を率いる名将の伝説エピソードから教育論まで

「白河以北一山百文」これは白河より北、つまり東北地方は一山百文程度の値打ちしかないという、戊辰戦争で賊軍とされた東北を蔑視する表現です。かつて高校野球の世界でも、甲子園の組み合わせ抽選会では、東北勢と当った高校がもう勝ったかのように喜ぶ姿が見られました。しかし2022年夏、ついに仙台育英高校が甲子園を制し、東北勢悲願の日本一となりました。それを率いたのが須江航です。

東北勢の野球の歴史を見ると、プロ野球では東北楽天ゴールデンイーグルス、大学野球では東北福祉大学がそれぞれ日本一に輝いていますが、高校野球は甲子園で春夏合わせて計12回決勝に進みながら、1度も勝てないまま、年号は大正、昭和、平成を過ぎ、令和になってようやく結実しました。

須江は仙台育英高校は高校野球でありがちだったエースの連投による酷使はせず、エース級を何人も育て上げ、彼らによる継投や分業で試合を勝ち抜いたり、選手たちが自分たちで考えてプレーするなど、選手たちひとりひとりの成長を促す指導法により、教育の一環としての高校野球を土台に頂点に達しました。それは高校野球の新しいトレンドだと言えます。

今回は東北野球界の悲願を達成する立役者となった須江航監督の凄さが分かる名言や語録を紐とき、仙台育英高校を率いる名将の伝説エピソードから教育論にまで迫ります。

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須江航について

まずは須江航の経歴を追ってみます。

1983年4月9日生まれ、埼玉県さいたま市出身。小学校2年生で野球を始め、高校は宮城県の仙台育英高校に進学。2年の秋からグランドマネジャーになり、3年では記録員として甲子園のベンチに座りました。卒業後は青森大学に進学。野球部で学生コーチを務めます。大学を卒業すると仙台育英高校と同じ学校法人の秀光中学校教諭に着任し、野球部監督に就任。2018年に仙台育英高校野球部監督になります。

野球強豪高校とはいえ、過去に神宮大会での優勝はあっても、甲子園では選抜大会での準優勝止まりだった仙台育英ですが、須江は選手が自ら考える野球を浸透させ、2022年夏の選手権大会で東北勢初となる悲願の甲子園優勝へと導きます。翌2023年の選手権大会も強豪を次々と倒し、決勝に進みますが、慶應高校に破れて準優勝となりました。

慶應旋風を巻き起こした森林貴彦監督よりも10歳若い須江だけに、これからの高校野球界をリードする指導者として期待されています。

 

私が選ぶ、須江航の凄さがわかる名言・語録集

【名言語録その1】

「青春ってすごく密なので」

2020年から世界中で猛威を振るった新型コロナウィルスは、国民生活に大きな影響を与えました。学生たちも例年行われる行事が次々に中止に追い込まれ、様々な経験を積んだり、思い出を作る機会を奪われました。高校野球も2020年には選抜大会も選手権大会も中止となり、全国の球児たちの夢も断たれました。

しかしこの期間が気付かせてくれたことや変えてくれたものもあります。須江はコロナ禍が、選手たちとよりコミュニケーションをとるきっかけになったと話しています。その中で「なんで僕らはまともに部活できないのに。大人はお酒飲んだり、旅行できるんですか?」という子どもたちの本音にぶつかったそうです。

「教育、医療、経済、それぞれに正義があり、正解がひとつではないのは理解しているのですが、とにかく大人の説得力に欠けた決定や振る舞いが多すぎて。僕としても上からものを言うのが申し訳なかった。だから子どもたちがどう思っていて、何をしたいのか、話をとにかく聞くようになりました」

大人は得てして「大人だから」という理由をつけがちです。子どもの目には理不尽なことも、丁寧に説明せず黙らせる。コロナ禍は病を引き起こしただけではなく、社会のさまざまな矛盾も露わにしました。須江はそういった状況下だからこそ、選手たちと向き合いました。

仙台育英高校はコロナ禍がようやく落ち着きを見せてきた2022年、夏の選手権大会で東北勢初となる甲子園優勝を遂げました。これまで東北勢が12回もはね返された決勝戦の壁も、選手たちはまったくプレッシャーを感じなかったようです。

「もしかしたら甲子園の決勝のプレッシャーなんかより、宿舎の部屋を出て、グラウンドで思いっきり野球が出来ることのほうが嬉しいって。そっちのほうに選手たちの気持ちの重心があったのかもしれないですね」

まさに「青春の密」さをしみじみ感じた夏だからこそ、先人たちが越えられなかった壁をあっさり越えたのかもしれません。

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【名言語録その2】

「正論や理論だけで通用しないことも多いんです」

高校野球の監督になるには、教員でなければならないという制限はありません。それは野球指導者としては経験豊富な人材を招くことができる一方、教育者しては経験不足あるいは認識不足の者もいるという側面を持っていることも否めません。少なくとも時代による子どもたちの意識の変化は教員である方が感じやすいだろうと思います。

須江は「高校生って色んな感情がありますよね」と言います。曰く「振れ幅の大きい子たちが集まっている」のだそうです。

「尊敬のまなざしで見てくる子もいれば、監督まじだりぃよ、とか文句を言いながら成長していかないといけない層もいますから、両方に対応できる顔を持っていないといけない」

そんな難しい時期の子どもたちの多様な顔を見ている須江は「自分たちの高校時代なんて、言うこと聞かなかったですよ」と笑い、「今は帰宅の途中とかちょっとわちゃわちゃしただけで、学校にクレームが来たりする世の中」であり、そんな「青春を生きる少年として、ごく当たりまえの要求さえタブーにされてしまう」中で頑張っている子どもたちに「敬意を表したい」と語っています。

敬意を持ち、ひとりの人間として子どもたちと対峙すると、まさに大人の論理である「正論や理論だけで通用しないことも多い」のは当然です。ものの考え方は経験や学びによって変化し成長するものだからです。だからこそ須江は、多くを選手たちの自主性に任せるのでしょう。

「自分の特性、得意技でどれだけチームに貢献できるかを、選手たちが考えてくれたら、充実した高校時代が送れると思うんです」

甲子園優勝への道のりは5人の投手の継投で、それぞれ総投球数が213、188、124、122、81という全員がエース級の活躍をした事実は、いかに才能があったにせよ、それぞれが考え、互いに切磋琢磨した結果なのだろうと思います。

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【名言語録その3】

「人生は敗者復活戦」

2023年、2連覇に挑んだ夏の甲子園では、1回戦で浦和学院、2回戦で聖光学院、3回戦で履正社、準々決勝で花巻東、準決勝で神村学園という、すべて優勝候補や甲子園常連校と当るという苦しい闘いの中、見事に決勝戦に進みますが、最後は力尽きて慶應に破れた仙台育英高校。慶應応援団のマナーなどに賛否があった試合ですが、須江曰く、選手は「誰も応援のせいとか1%も思ってないですよ」と否定し「慶應さんがやりたい野球をしていて、普通に強かった。完敗です」と話しています。

決勝戦ではエラーなどミスも響きましたが、須江は試合中にミスが起こっても厳しい叱責はほぼしません。

「ミスの原因ってほとんどが思考の問題なんです。だいたいのミスは頭が追いついていない。自分が何をすればいいのか分からないうちに、何かしなくちゃいけなくなって、結局できなくてそれがミスになる。その場でお前、何をやっているんだって言っても手遅れなんです」

ミスを防ぐため、須江はいきなり怒るのではなく、なぜそのミスが起きたのかを考えさせ、起きないようにするにはどうすべきか、選手自らが気付くようにしています。規律や生活態度で厳しく言うことはあっても、ミスに対しての怒りはしないのです。

「大人が叱ることに依存してしまうと、子どもの行動原理は、大人に叱られないようにするには、となってしまう。だから僕はダメなことと改善したほうがいい理由を、丁寧に何度でも丁寧に説明する必要があると思うんです」

2001年の選抜大会で学生コーチをしていた須江は「怒ってばかりだった」そうです。曰く「情熱の矛先がすべて怒りに変わってしまった」のだとか。チームで孤立した経験から多く学んだという須江。

「本当に大失敗でしたから。でも、あの時の経験が今、指導者となっていきている部分はかなりありますよ」

須江自身も「敗者復活戦」を乗り越えてきたことが、教師として、高校野球の指導者としていきているのだと思います。そしてその姿は高校野球指導者のニュースタンダードになるかもしれません。

 

名言からの学び

・経験のすべてが人を成長させる

・考えることも経験のひとつである

・勝ちっぱなしの人生はない

 

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