星野伸之の凄さが分かる名言・語録集!イチローとも親交が深い天才投手の「伝説のスローカーブ」エピソードから努力論まで
プロ野球の創成期、沢村賞に名前を残す沢村栄治の縦に落ちるカーブは「懸河のドロップ」と言われ、400勝投手の金田正一のカーブも野村克也が「2階から落ちてくる」と表現するほど威力がありました。その後、落ちるボールや動くボールが主流となりますが、近年再びカーブを武器にする投手が増えているようです。プロ野球史上、屈指の超スローカーブの使い手が星野伸之です。
星野の速球は最速130キロ台であり、アマチュアでも彼よりも速い投手はいくらでもいました。しかし遅いボールを速く見せたり、更に遅く見せたり、ゆったりとしなるようなフォームから巧妙に球速を変え、超スローカーブをうまく活用した投球術で、通算176勝をあげ、プロ歴代21位となる2041個もの三振を奪っています。
その投球術から多くの打者が、もっとも速く感じた投手として名前をあげるほどで、球史に残る遅球の速球派投手と呼べる星野。
今回はイチローとも親交が深い星野伸之の凄さが分かる名言や語録を紐解き、「伝説のスローカーブ」で三振の山を築いた天才投手のエピソードから努力論にまで迫ります。
星野伸之について
まずは星野伸之の経歴を追ってみます。
1966年1月31日生まれ、北海道旭川市出身。旭川工業高校では「北の奪三振王」として活躍しましたが、甲子園出場はならず、1983年のドラフト5位で阪急ブレーブス(現オリックスバッファローズ)に指名され、大学に行くつもりで4年は頑張ってみようと入団。
当時、ブレーブスには山田久志、佐藤義則、今井雄太郎、山沖之彦らの投手陣に、福本豊、蓑田浩二、水谷実雄、松永浩美、ブーマーなどの野手陣と、レジェンドクラスの選手がたくさんおり、星野は山田らに可愛がられ、たくさんのことを学びました。
2年目の1985年に初勝利をあげ、1986年には先発ローテーション入りし、1987年に2桁勝利をあげると、そこから11年連続で2桁勝利を記録します。1989年に球団の売却により、オリックスブルーウェーブに変わりますが、そんな激変の中でも左のエースとしてチームを支え続けます。
1995年には本拠地神戸を阪神淡路大震災が襲いますが、野田浩司、長谷川滋利、平井正史、イチロー、田口壮らのメンバーと共に、見事リーグ優勝を成し遂げ、神戸の街を励ましました。翌年も最高勝率を記録し、リーグ優勝に貢献します。
1999年オフにFAで阪神タイガースに移籍。開幕投手を務めますが、頻脈のために調子が上がらず、2002年に引退。
現役通算18年間で176勝、2セーブ、2041奪三振、防御率3.64。最高勝率2回。
引退後は解説者、阪神タイガースのコーチ、オリックス・バファローズのコーチなどを歴任しています。
私が選ぶ、星野伸之の凄さがわかる名言・語録集
【名言語録その1】
「あの頃の僕は相手と戦う前にスピードガンと戦っていた」
遅球で有名な星野も、初めからそれに納得していたわけではなく、最初の頃はスピードガン表示の低さが恥ずかしかったそうです。球速を上げようといろいろ試しもしましたが、うまくいきませんでした。
遅いボールをうまく使うコツを覚えたきっかけは、「フォアボールを避けようとしたこと」だそうです。ランナーがいない場面などでは、フォアボールで出塁させるくらいなら、シングルヒットの方がまだいいと考えるのは、投手もベンチも同じでしょう。良い打者でも安打は3割ですから、多少甘いボールでもミスショットする可能性があるからです。
「そこで、ヒットを打ってくれ、という気持ちで開き直って遅いストレートを投げました」
それがうまく打者のタイミングを狂わせるので、武器になると思ったそうです。星野のストレートは速度差を変えて投げ分けているため、タイミングがずれ、梨田昌孝は「金縛りみたいになって、バットを振れなかった」と証言しています。
秋田での試合で、とても試合が長くなった時、観客から「お前がそんなに遅い球投げるから、試合時間が長いんだよ」とヤジられ、思わず笑ったそうです。自分の武器が認知され、軽く受け流せるようになったことで、スピードガンを忘れることできたのだと思います。
【名言語録その2】
「困ったことに実際に捕れてしまうボールなんですよ」
試合中に捕手の中嶋聡が、星野のカーブを素手で捕り、それよりも速いボールを投げ返したことがあります。星野は「ピッチャーの投げたボールを素手で捕るバカがいるか」と怒ったそうですが、両軍ベンチは爆笑に包まれました。
「中嶋の奴、ミットを動かしたけど届きませんでした、とシャアシャアと言い訳したんですよ。でも後でVTRを見ると、少しもミットを動かしていない。もうムカムカしましたね」
そう言いつつも、「実際に捕れてしまう」と自ら笑う星野。このエピソードが星野の「超スローカーブ」伝説に花を添えているのは間違いなく、今となっては中嶋のファインプレーと言えるかもしれません。
「カーブのスピードは別に何キロでもいいんですよ」
大切なのは「打たれてもいいやという気持ち」なのだそうです。
「下手に気合を入れて力で抑え込もうとすると、逆にタイミングを合わされちゃいますからね。どうぞ打ってください、という気持ちの方が大切なんです」
相手に合わせているようでいて相手を誘う、ある意味で、もっとわがままなボールかもしれません。
【名言語録その3】
「球が速くても辞めていく子もたくさん見てきているので、緩急で生き延びられるピッチャーもいっぱいいると思うので、カーブをもう一度見直してもらえたらすごく嬉しいなと思いますけどね」
ボールが遅くても活躍している投手は星野の他にも、山本昌や石川雅規など、少なくはありません。そして一時期は投げる人が少なかったカーブも、最近は見直されてきて、有効に使う投手も増えてきています。
遅い球は苦肉の策であり「普通に待たれたら打たれるボールばかり」という星野。だからこそ「打たれる確率の少ないボールやコースを選択しなくちゃならない」のですが、それは「常に不安と背中合わせ」だと言います。しかし打者からしても、遅い球を打ち損じるのは、何となく損をした感じになり、つい速い球を狙いがちになります。
「一度くらいは140キロの体験をしてみたい。いったい、どんな感覚なのでしょうね」
そう語る星野ですが、もし140キロを投げられても、こんなものかと思うような気もしますし、より良い成績を上げられたかどうかもわからないと思います。
【名言番外編】
「イチローの方に打たすから勝負させてくれ」
ベンチから敬遠のサインが出た時に、星野が「イチローの方に打たす」と訴えると、結構OKが出たのだそうです。コントロールの良い星野と、守備の良いイチローだからこそ許されたのでしょう。
打者が嫌がる投球論 投手が嫌がる打撃論 (廣済堂新書 92)
名言からの学び
・戦うべき相手を間違えてはいけない。
・プロは相手に合わせながら、自分のフィールドに引き込む。
・短所は長所でもある。
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