現役ドラフト制度のルールや仕組みは?条件・資格からメリット・デメリットまで徹底解説!
2020/02/02
2020年、プロ野球に新しい制度が導入されます。
その制度名は「現役ドラフト」。海の向こうのメジャーリーグでは、既に実施されている現役選手を指名対象としたドラフト制度です。これまで何度か導入に向けた議論が日本野球機構と選手会の間で行われており、今夏ついに実現します。
そこで今回は現役ドラフトのルール・仕組みや対象選手の条件・資格、メリット・デメリットまでをメジャーの制度を交えて徹底解説します。
目次
現役ドラフト制度とは?メジャーでの成果を確認しよう
現役ドラフト制度とは?
現役ドラフト制度とは出場機会の少ない選手の移籍活性化を目的とした制度です。現在のプロ野球の移籍方法はトレード、FA(フリーエージェント)、自由契約が挙げられます。
トレードによって新たな環境で輝く選手、自由契約から他球団に移籍して活躍する選手もいますが、決して多いとは言えない状況です。
そうした中、チーム事情によって出場機会が得られず埋もれてしまい、移籍することで「飼い殺し」状態から脱却できる選手がいると選手会は考えており、2018年から導入を訴えてきました。そしてようやく今夏の実現が有力になってきました。
メジャーリーグ「ルール5ドラフト」のルールとは?
メジャーリーグでは「ルール5ドラフト」として毎年12月のウインターミーティング最終日に実施されています。名称の由来はMLB規約の第5条に規定されていることからきています。
選手登録枠である40人に空きがあるチームのみが参加可能で、メジャー経験のない有望選手がメジャー40人枠から漏れたままマイナーリーグで飼い殺し状態になることを防ぐ目的で行われており、この制度によって花開いた選手がいます。
メジャーリーグでの成果や成功例について
代表的なのは04年と06年にその年最も活躍した投手に贈られるサイ・ヤング賞を獲得したヨハン・サンタナ投手です。メジャー経験がないまま4年が過ぎ、99年のルール5ドラフトの対象選手となるとアストロズからマーリンズに指名され、即日トレードにてツインズに移籍しました。翌年メジャーデビューを果たし04年には20勝、06年には19勝挙げメジャーリーグを代表する左腕になりました。
野手ではジョシュ・ハミルトン選手が挙げられます。デビルレイズに入団した後アルコールと薬物依存症に苦しみ出場禁止処分を受けていましたが、復帰した06年にカブスに指名され、即日レッズに金銭トレードで移籍しました。その後レンジャーズに移籍すると08年には打点王、10年にはアリーグのMVPを受賞するなど活躍を見せました。
この2選手はルール5ドラフトを経て大きく羽ばたいた選手と言えます。
現役ドラフト制度のルールや仕組みについて
現役ドラフト制度のルールや仕組みは?
ここでは現役ドラフト制度のルールや仕組みを確認してみましょう。20年1月末時点で予想される内容になります。
・実施時期は東京オリンピックで中断する7月末から8月の間に実施する。
・各球団が支配下選手8人の名簿を提出する。
・現役ドラフトまでにトレードを行った球団は移籍した人数を8人から引くが、指名対象選手の最少人数は6人とする。
・各球団は最低1人を指名するが、指名のなかった対象選手は非公開とする。
現役ドラフト制度の対象選手や条件・資格は?
続いて対象選手について見てみましょう。現時点で明確な対象選手の条件・資格は明らかになっていませんが、報道されている内容は以下の通りです。
・前年のドラフト会議で指名された新人選手は対象外とする。
・外国人や一定の高額年俸選手も対象外とする。
・各球団が任意でリストアップするため、対象選手が限られる可能性がある。
・選手会側は入団年数ごとに1軍登録日数の下限を設け、登録日数に満たない選手をすべて対象にすることを要望している。
メジャーリーグでの「ルール5ドラフト」との違いは?
メジャーリーグの「ルール5ドラフト」は
・12月のウインターミーティングで実施。
・メジャー40人枠に入っていない選手が対象で、契約時に19歳以上は4年、18歳以下は入団から5年経過した選手が対象。
・獲得した球団は、翌年はシーズンを通して25人のベンチ入りメンバーに常時入れなければならない。
・指名元の球団に10万ドルを支払う。
・獲得した選手をマイナーに降格させたい場合は、元の所属チームに選手を返還し支払った10万ドルの半分を還してもらうことができる。
といった仕組みで行われています。
現役ドラフト制度はまだ詳細が発表されていませんが現時点での情報を基にすると、開催時期がシーズン中であることと対象選手は各球団が選定することがルール5ドラフトと大きく違う点です。
メジャーリーグではウインターミーティングの中で開催されるため、翌シーズンの補強策の一環として位置づけられており、メジャー40人枠から外れていて条件に合致すれば球団の意思に関わらず対象選手になります。そのため各球団の編成力が試されます。
現役ドラフト制度のメリット・デメリットとは?
現役ドラフト制度のメリット
・チャンスが与えられなかった選手に活躍の場が与えられる。
・選手層の薄いチームが戦力補強できる。
・戦力の均衡化が図られる。
選手層の厚いチームでは出場機会が限られていた選手が、選手層の薄いチームに移籍したことによりレギュラーや主力に育っていく可能性があります。また、近年は成績を落としていた選手も復活のチャンスになりそうです。
トレードの事例ですが、巨人では選手層の厚さに阻まれ2年間で15試合の1軍登板数だった公文克彦投手は、日本ハムに移籍後3年間で159試合に登板しておりチームを支える中継ぎへと上り詰めました。
このように埋もれていた選手を救済し、活躍の場を与えられる点が最大のメリットだと考えます。
現役ドラフト制度のデメリット
・想定される仕組みでは球団によって対象選手が決まるため、出場機会が少ない有望な選手は名簿に記載されない可能性がある。
・選手層の厚いチームが不利になる。
・夏の開催だと次年度を見越した選択になる。
現時点で報道されている通りの仕組みになると、メジャーと違い球団側が対象選手を選出するため、流出を防ぐために有望な選手は名簿に記載されない可能性があります。
また、巨人の原辰徳監督が開催時期に言及し、「8月だと翌シーズンを見越しての選択、3月ならばそのシーズンに必要だから取ることになる」と開催時期によって出場機会が与えられる時期が変わってしまうことを示唆しており、3月案を提言しています。
翌シーズンを見越しての補強になると、実施されたシーズンのオフで各球団が戦力補強の動向によってはせっかく移籍したのにまた埋もれてしまう可能性があり、選手を救済するシステムからは離れていってしまう恐れがあります。
現役ドラフト制度に期待したいこと
力を発揮するチャンスが与えられなかった選手が、新しい環境で活躍する制度になることを期待します。
実力の世界とは言え、運やタイミングも重要だと考えます。主力が怪我をしてポジションを掴んだ選手もいれば、絶対的な存在の陰に隠れてしまい、実力を発揮する機会を得ることができずにプロの世界を去った選手もいるのではないでしょうか。
自身の持っている力を最大限に発揮できる環境に身を置き、現役ドラフト制度で指名された選手の中から多くの選手が、プロ野球ファンや子どもたちに夢と感動を与えるプレーを見せてくれることを期待します。
まとめ
・「現役ドラフト」とは出場機会の少ない選手の移籍活性化を狙った制度である。
・メジャーリーグでは「ルール5ドラフト」が行われており、数々のスタープレイヤーが指名選手の中から現れている。
・現役ドラフト制度とルール5ドラフトでは、対象選手の条件と開催時期が異なる。
・出場機会の少ない選手が移籍し主力選手になる可能性がある一方、現時点で有力視されている対象選手の選出方法だと有望な選手は選出されないことも想定される。
現役ドラフト制度が益々のプロ野球の発展と多くの選手の活躍に繋がることを期待します。
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