平野謙の凄さが分かる名言・語録集!心優しき男の伝説エピソードから人生哲学まで
日本プロ野球の金字塔である読売ジャイアンツのV9。1965年から1973年まで9年連続で日本一という記録は今後破られそうにありません。しかしリーグ優勝ならばそれに迫ったチームがありました。1985年から1988年まで4連覇、1990年から1994年まで5連覇した西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)です。1989年にもしあと1勝していたら、奇跡のリーグ10連覇が達成されていたかもしれません。この最強ライオンズ黄金期に活躍したひとりが平野謙です。
小技の上手い、俊足巧打好守の外野手として中日ドラゴンズで躍動しましたが、平野の真価が発揮されたのは移籍し、ライオンズで活躍した時代でしょう。広い守備範囲と強肩ぶりから、秋山幸二との右中間は鉄壁でしたし、2番打者として状況に合わせた小技もうまいスイッチヒッターとして、最強チームを支えました。
明るく、人柄の良さでも知られる平野。引退後もNPBの球団のみならず、独立リーグや社会人チーム、クラブチームなど、さまざまなチームから指導者として求められ続けています。
今回はゴールデングラブ賞9回受賞の名手平野謙の凄さが分かる名言や語録を紐解き、心優しき男の伝説エピソードから人生哲学にまで迫ります。
平野謙について
まずは平野謙の経歴を追ってみます。
1955年6月20日生まれ、愛知県名古屋市出身。小学4年生から野球を始めますが、幼少の頃に父、小学生の時に母を相次いで亡くし、家業の金物店を畳んで犬山市に転居します。中学には野球部がなかったためサッカー、バスケットボール、卓球などをかけもちでやっていました。犬山高校へ進学すると投手として活躍し、特待生として名古屋商科大学に進学。3年次には愛知大学リーグで優勝し、MVPに選ばれます。1977年にドラフト外で中日ドラゴンズへ入団しました。
ルーキーイヤーに2軍で投手として2勝を上げますが、翌1979年に外野手へコンバート。1980年にはスイッチヒッターに転向します。この年のオフに戦力外になりかけますが、平野の守備力に注目した近藤貞雄監督の希望で残留。1981年に開幕1軍入りをし、主に守備固めで起用されるようになります。1982年にレギュラーを獲得し、当時のシーズン記録となる51犠打、最多捕殺など攻守でチーム優勝に貢献しました。1985年初のシーズン打率3割を記録。1986年には盗塁王のタイトルを獲得しましたが、1987年に度重なるケガに見舞われ、レギュラーを失うと、シーズンオフに西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)へトレードとなりました。
1988年は自己最高となる打率.303を記録し、常勝ライオンズの一員として日本シリーズでは古巣ドラゴンズと対戦。見事、日本一に貢献します。1989年には外野手歴代3位となる捕殺21を記録。1990年、当時の日本記録を更新する365犠打に到達します。1988年から1992年まで5年連続でリーグ最多の犠打を記録しました。しかし年齢もあって1993年オフに自由契約となり、1994年は千葉ロッテマリーンズに入団。1995年からはコーチを兼任し、1996年に史上初の450犠打を達成。そのオフに引退します。
日本プロ野球通算19年間で1551安打、53本塁打、230盗塁、通算打率.273。盗塁王1回、ベストナイン1回、ゴールデングラブ賞9回。通算犠打451は史上歴代2位。
引退後は指導者としてマリーンズのコーチや二軍監督、北海道日本ハムファイターズ、中日ドラゴンズのコーチの他、社会人野球、独立リーグなどで監督やコーチを務め、2023年からはクラブチームである山岸ロジスターズの監督に就任しました。YouTuberとしても活躍しています。
私が選ぶ、平野謙の凄さがわかる名言・語録集
【名言語録その1】
「それぞれが自分の役割をきちんとわかっていて、その役割を忠実に演じることで、チームとして機能していた」
チームとは平野が在籍した6年間に5度のリーグ優勝をし、黄金期を迎えていたライオンズです。平野曰く「すでに出来上がっている選手が集まっていたチーム」でした。
辻発彦、秋山幸二、清原和博、デストラーデ、石毛宏典、伊東勤、東尾修、渡辺久信、工藤公康、郭泰源、潮崎哲也、鹿取義隆といった球史に残る中心選手たちの他に、田辺徳雄、石井丈裕、渡辺智男などファンの記憶に残る選手たちがその時代に集まっていました。更に広岡達朗と森祗晶という名将に率いられ、どうすれば勝てるのかをよく知っていました。
そこにトレードで加わり、秋山と鉄壁の右中間を作り、強力クリーンナップにつなぐ2番打者として役割を果たした平野。
「3番、4番、5番が強固だったので、1番、2番の役割も明確だったんだと思います」という説明はまったくその通りだったと思います。しかしそれと同時に平野はその人柄から、人間関係の面でもつなぎ役を果たしていました。
「キヨ(清原和博)との接し方は自分なりに意識しましたね。いつもロッカーでは『おいキヨ、いるんか?挨拶に来ないから、いるのかいないのかわかんねぇよ』って言ったりしてましたよ。鳴り物入りで入って来た男だから、腫れ物に触るというか、周りが扱いに困っている部分があったんです。でも僕のような外から来た人間にとっては、そういう部分は関係ないからね。挨拶もまともにできないという噂は聞いていたけど、彼もまだ子どもだったから。のほほんとしている部分もあったし、おっとりした部分もあったから、やかましい先輩がひとりくらいいてもええやろって思って、そういうことを言ったんです」
その後の清原が起こした事件を思えば、平野のような先輩が身近にいなくなったことが、遠因のひとつだったように感じますし、ライオンズの職人集団がひとつにまとまり、常勝チームであり続けた一因なのだと思います。
【名言語録その2】
「センスがあったら自分でなんとかしようとしたでしょうが、不器用だったので、いろんなことを吸収して学びました」
スイッチヒッターとしてシーズン3割も記録した平野ですが、「左はプロ入り後に作ったモノ」だったため、先輩たちの打撃から多くを学んだそうです。
幼い時に両親を亡くし、姉が高校を休学して働くなどの献身によって高校まで進学させてもらったという平野。高校卒業後は就職するつもりが、名古屋商科大学から特待生として声をかけられたものの、大学では甲子園組が締める中で決して目立つ選手ではなく、就職も決まっていましたが監督の推薦もあり、ドラゴンズからドラフト外で声がかかりました。
ドラゴンズはドラフト指名した選手3名から入団拒否をされたという事情もあったのですが、大学進学といい、プロ入りといい、その運を導きだしたのは間違いなく彼自身の努力でしょう。しかし同時に多くの人に支えられなければ、絶対に無理だった筈です。平野のひたむきに学ぼうとする姿勢を周囲の人が評価したからこそ、彼の成功は訪れたのです。
【名言語録その3】
「自分のやり方が認められなかったら、ゲームに出られなかっただけでしょう。でも、それを変えるつもりもなかったし、受け止めてくれるコーチでした」
ゴールデングラブ賞を9度も獲得した名手である平野。チームメイトだった石毛宏典は平野の強肩について「刺されるかもしれないというプレッシャーを相手に感じさせて、1塁走者を3塁に行かせない、2塁走者を本塁に還らせない選手だった。進塁を抑止してライト守備の重要性を知らしめたことも大きな功績」だと語っています。
平野より少し前には蓑田浩二もいて、1980年前後は石毛の言う強肩ライトの効果を知らしめる黎明期だったと言えます。特に平野はそれまで右利きの外野手は左足前で捕球し、送球につなげるのが当たり前とされていたものを、右足前で捕球した方が素早い送球が可能だと実践して見せ、ドラゴンズのコーチを納得させました。現在はこの平野方式が主流になっています。
史上2位の記録を持つバントについても、石毛によれば、平野曰く「足が大事だ」と話したそうです。バントをする時は腕を動かすのではなく、膝を中心とした足の動きでボールの高低やコースに合わせる。そうすると構えたバットの角度が変わりにくいので成功率が高くなるということです。
他の人に学ぶ姿勢を持ちながらも、これだと思うところにはこだわりを捨てない平野。打撃についても「ケースバッティングはセオリーであり、絶対に守るルールではないということ。知っていれば知っているだけ得なものですが、頭に置いておくのは、縛られ過ぎてはいけないの意識」と話しています。
他者から学ぶ姿勢と自分なりの独創性は両立する。平野はその見本だと言えます。
名言からの学び
・主役ばかりでなく、つなぎ役も必要である
・周囲が評価するからこそ、自分がある
・他者から学ぶ姿勢と自分なりの独創性は両立する
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