ヒルマン監督の凄さが分かる名言・語録集!日本ハムの名将の伝説エピソードからリーダーシップ論まで
2019年シーズン終了まで、日本プロ野球で指揮をとった外国人監督は合計9人います。その中で見事チームを日本一まで導いたのはわずかに2人。千葉ロッテマリーンズを率いたボビー・バレンタインと、北海道日本ハムファイターズを率いたトレイ・ヒルマンです。
ヒルマンはメジャーリーグと韓国プロ野球リーグでも監督を務めており、この3か国でプロの監督を務めた唯一の人物です。バレンタインが日本でもメジャーでも強いリーダシップを発揮し、自分流の采配を繰り広げた監督だったのに対して、ヒルマンはその国やチームの状況に合わせた柔軟な采配で日本一に輝きました。
インタビューで「シンジラレナーイ」と連発し、2006年の流行語大賞のひとつにも選ばれるなど、人気者になったヒルマンですが、その後に韓国リーグも制覇し、いよいよ残るはメジャー制覇となっています。
今回は日本ハムの名将ヒルマン監督の凄さが分かる名言や語録を紐解き、伝説エピソードからリーダーシップ論にまで迫ります。
トレイ・ヒルマンについて
まずはヒルマンの経歴を追ってみます。
1963年1月3日生まれ、アメリカ合衆国テキサス州生まれ。テキサス大学アーリントン校を卒業し、1985年にクリーブランドインディアンスと契約。マイナーリーグで3年間を過ごし、1987年に引退。
1988年にインディアンスのスカウト、1990年から11年間はニューヨークヤンキース傘下のマイナーチームで監督を経験します。2002年にテキサスレンジャーズの育成部門を経て、2003年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任します。
2003年は5位に終わり、2004年は3位、2005年は5位でしたが、その間にチームはFAで新庄剛志、稲葉篤紀を獲得し、ドラフトでダルビッシュ有を入団させるなど、投打の核となる選手を得て、更に武田久、マイケル中村、岡島秀樹ら強力リリーフ陣を整備し、小笠原道大ら生え抜き選手の奮起もあって、2006年にチームは東映フライヤーズ時代から44年ぶりの日本一に輝きます。
2007年にはリーグ連覇を果たしますが、シーズン中に退任を発表。2008年からカンザスシティロイヤルズの監督に就任しますが、2010年途中で解任。その後はロサンジェルスドジャース、ニューヨークヤンキース、ヒューストンアストロズのコーチを歴任。
2016年に韓国プロ野球のSKワイバーンズの監督となり、2018年にシーズン2位から韓国シリーズを制して退任。2019年からはマイアミマリーンズのコーチを務めています。
日本プロ野球での監督通算5年間で349勝、日本一1回、リーグ優勝2回、Aクラス3回。
私が選ぶ、ヒルマンの凄さがわかる名言・語録集
【名言語録その1】
「バントは日本人の免罪符だ」
バント戦術に関してはいろいろな議論があります。ただアメリカ野球学会の統計では、ノーアウトランナー1塁での得点確率は.891です。バントで送り、ワンアウトランナー2塁にした場合、得点確率は.682に低下します。つまりバントしない方がおよそ2割も得点の確率が高いわけです。しかし日本では確率よりも「流れ」を大事にします。
ヒルマンは当初アメリカ流で、キャンプでも練習は1日3時間に制限しました。しかしそれはうまく受け入れられず、選手やコーチからはもっと練習させてほしいとの要望があったそうです。
ヒルマンはそれを合理的ではないと思いつつも受け入れました。
後に韓国プロ野球ではメジャー流で成功し、そのやり方は韓国ではひとつのトレンドになりましたが、ヒルマンはそれについて「多分日本よりも韓国の方が少しスムーズだった。少なくとも野球では、韓国は日本よりも少し開放的なのかもしれない」と話しています。
よく「野球とベースボールは違う」と言いますが、たとえば麻雀にもオカルト派と確率派が存在するように、勝負事には時に非合理なジンクスの方が説得力を持つことがあります。
ヒルマンは内心おかしいと思いつつも、2007年には133回もの犠牲バントを指示し、日本一に輝きました。それはたとえ違うと感じても、有効ならば異なる意見でも取り入れる度量が、成功に導いたのだと思います。
【名言語録その2】
「この国では多くの練習をし、投手は投げ込まなければならないということを学んだ」
これもヒルマンの本意ではなく、日本の習慣に合わせたということです。当初は投げ込みをナンセンスだとしていたヒルマンですが、コーチやダルビッシュ有などとも話し合い、投手コーチの管理の元で、ある程度の投げ込みを認めました。
ヒルマンからすると日本の選手は命令されることに慣れ、相互のコミュニケーションをとるのが下手なのだそうです。そのためによく話し合う時間をとり、選手が何を求めているのかをしることで、気持ちよく選手がプレイできる環境を整えました。
金子誠はヒルマンとの5年間は濃密だったと語り、岩本勉など多くの選手や関係者とは今でも交流が絶えないそうです。
ヒルマンがある講演会に呼ばれ、選手を褒めることや一対一の対話の重要性を話した際、ある人から「もっと強く出ないとなめられて収拾がつかなくなるよ」と忠告を受けたそうです。しかしヒルマンは「それは単にあなたの権勢欲を満足させるためでしょう。相手をへこませる必要がどこにありますか」と反論しました。
柔軟に相手の意見をくみ取るヒルマンですが、ただ温和で優しい紳士といういうのではなく、しっかりとした意思と主張を持った上で、譲歩するべきところは譲歩する、まさに多様性を重んじる姿勢が見えます。
【名言語録その3】
「できればここにいる人たち、全国のファイターズファンの人たちひとりひとりを、われわれがマウンドの上で胴上げしたい」
日本の野球に疑問を抱きながらも否定はせず、それを長所として有効に生かしたヒルマン。
「人生でも学ばないといけないことがたくさんあるだろう。でも結果的にはみんな同じ人間だし、間違いだってあるしね。野球はできるだけ少ないミスでおさめること。そして人との絆を大切にすることだね。どの文化にも言えることだと思うよ」
ヒルマンが日本でも韓国でも成功したのは、人との関係性を重視し、しっかりとコミュニケーションをとって信用し合うことで、共に挑戦するという異文化交流の基本を大切にしているからなのでしょう。
「どこにいようが、どのチーム、どのレベル、どの国であろうが、本当に関係ない。チャンピオンになることを目標としたら、ニューヨークペンリーグ(マイナーリーグのひとつ)のチャンピオンシップを制覇することと、NPB、KBO(韓国プロ野球)のチャンピオンシップを制覇することは、本当に同じくらいにワクワクすることなんだ」
ヒルマンならばいつか多種多様な民族のるつぼであるメジャーリーグで、チャンピオンシップを制することができそうな気がします。
名言からの学び
・異なる意見も決して無用ではない。
・管理と強制は別物である。
・異なる立場を排除しないことが豊かさである。
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