アルフレド・デスパイネの凄さが分かる名言・語録集！キューバ代表パワーヒッターの伝説エピソードから努力論まで

2024/09/07

1990年代半ばまで、野球の国際大会にはアマチュア選手しか出場できませんでした。その時代、世界最強のアマチュア軍団として名をはせた国こそキューバです。メジャーリーグも注目する優れた選手がたくさんいましたが、国家体制の問題もあり、他国でプレーすることが許されていませんでした。そのため数多くの選手が亡命者となりましたが、2013年より選手の海外派遣が解禁になり、それを利用して海外に出た先駆けのひとりがアルフレド・デスパイネです。

キューバ国内リーグでのシーズン最多本塁打記録をうちたて、北京オリンピック、ＷＢＣ、ＷＢＳＣプレミア12、インターコンチネンタルカップ、世界大学野球選手権など、数々の国際大会に出場したデスパイネ。

数々の選手がメジャーリーグでプレーするために亡命する中、デスパイネはその誘惑には乗らず、日本でのシーズンオフはキューバ人選手として、国内リーグやカリビアンシリーズに参加し、活躍をしています。

今回はキューバ代表パワーヒッターであるアルフレド・デスパイネの凄さが分かる名言や語録を紐解き、その伝説エピソードから努力論にまで迫ります。

1 アルフレド・デスパイネについて
2 私が選ぶ、アルフレド・デスパイネの凄さがわかる名言・語録集
3 名言からの学び

アルフレド・デスパイネについて

まずはアルフレド・デスパイネの経歴を追ってみます。

本名アルフレド・デスパイネ・ロドリゲス。1986年6月17日生まれ、キューバ共和国サンティアゴ・デ・クーパ州コントラマエストレ出身。マニュエル・ファハルド国立体育大学卒業。

2004年に16歳から18歳が参加するＡＡＡ世界野球選手権大会でキューバ代表に初選出、見事に日本を下して優勝を飾ります。2007年にはＩＢＡＦワールドカップ準優勝、2008年北京オリンピック銀メダル、2009年ＷＢＣで代表としてプレーし、2010年の世界大学野球選手権大会では決勝戦で2本のホームランを放ち、大会ＭＶＰに輝きます。国内リーグ2011-2012シーズンでは国内記録となるシーズン36本塁打を記録。2013年にメキシコのカンペチェ・パイレーツでプレーし、2014年の7月に千葉ロッテ・マリーンズと契約に至ります。

初年度は45試合出場ながらも12本塁打を記録。翌2015年、キューバ国内リーグでの優勝、ＭＶＰ選出後に合流。途中でケガやキューバ代表試合のため離脱もあり、103試合18本塁打にとどまりました。2016年シーズン終了後、自由契約となり福岡ソフトバンクホークスと契約。

2017年、35本塁打103打点で2冠に輝き、チームの日本一に貢献します。この年から3年連続で25本以上の本塁打を記録し、ベスト9にも2度選ばれます。2019年オフに一度は自由契約となりますが、チーム事情もありホークスは彼と再契約をします。しかし2020年は新型コロナウイルス禍もあり出国できず、来日が遅れた上、ケガもあり、25試合出場にとどまりました。その後も不調やケガ、コロナウイルス感染、キューバ代表参加などあり、出場数を減らし、2022年シーズン限りで自由契約。2023年6月にまたもホークスが再契約しますが、このシーズン限りで退団しました。

日本プロ野球通算10年間で、789安打、184本塁打、打率.261。本塁打王1回、打点王1回、ベストナイン2回。

キューバに帰国後は国内リーグでプレーし、2023-2024シーズンも本塁打王を獲得し、39歳にして健在ぶりを見せています。

私が選ぶ、アルフレド・デスパイネの凄さがわかる名言・語録集

【名言語録その1】

「ゴロではなく、ライナーや高い軌道の強いボールを打つ。そのためにコンタクトということを中心に考えています」

デスパイネはバッターにとって一番大事なのは「バットにボールを当てる」ことだと言っています。その上で「ライナーや高い軌道の強いボールを打つ」ためにコンタクトを重視しているわけです。この場合のコンタクトとはいわゆるコンタクト率、つまり投球に対してバットに当てる割合のことです。

打球を放ってのアウトも三振も同じアウトだという人もいますが、打球がフィールド内に飛べばエラーも起こり得ます。2023年を例にとればひとチーム50から90の失策があります。一番良いのは安打ですが、続いて四球、そしてエラー出塁もチームのためになります。

デスパイネはそのため「外のボールだったらライト方向に強い打球を打ちたいですし、インサイドのボールだったらセンターからレフトへ打つ。球種やコースによって打球の角度が変わっていきます」と答えています。

ある意味で打撃の基本とも言える話ですが、そのためにはボールを十分に引きつけなければいけないので、スイングの速さやボールを捉える技術が必要ですし、パワーも要ります。シンプルだからこそ難しいことです。

2017年の日本シリーズで対戦した横浜ＤｅＮＡベイスターズの捕手は、2023年にホークスでデスパイネと同僚になる嶺井博希でした。初球に外角のボールを投げさせて、その残像が残っているところにインコース高めの真っ直ぐで、デスパイネは抑えられると確信していましたが、見事に痛打され、攻め手を失ったそうです。

かつて埼玉西武ライオンズに在籍していたメジャーリーガーの菊池雄星は、一番怖いバッターとしてデスパイネの名前をあげました。

メジャーリーグも注目していたというデスパイネの凄さの片鱗がわかります。

【名言語録その2】

「今の野球は情報戦だ」

キューバ代表選手として、数々の国際大会に出場しているデスパイネ。キューバという国は政治体制の問題もあり、かつては他国に選手を出さない鎖国のような状況にありました。そのためホセ・コントレラスやアロルディス・チャップマンなど、優れた選手たちの亡命も少なくはありませんでした。

2013年頃から国からの派遣という形で、他国でもプレーできるようになり、そのさきがけのひとりがデスパイネでした。2018年にはキューバへ譲渡金を支払うのを条件に、キューバ選手とメジャーリーグ球団との契約が可能となりますが、トランプ大統領はそれを無効とし、2022年にようやく選手が独自に契約を結ぶことができるようになりました。

それでも今もなお亡命選手は出ており、2022年のＵ-15ワールドカップに出場した20選手中19人が亡命してますし、2023年には日本の中日ドラゴンズで活躍していたジャリエル・ロドリゲスが来日せず、アメリカに亡命して、トロント・ブルージェイズと契約してしまいました。

そんな中、時に亡命が噂されながらも、デスパイネはキューバを捨てませんでした。事実、メジャーリーグの球団から誘いはあったものの、キューバ国籍を捨てるのを嫌がりました。

2023年のＷＢＣでもキューバ代表とした戦ったデスパイネ。対パナマ戦では、なぜかブルペンと連絡する電話を手にしているのを映し出されましたが、そのキャリアはコーチとしても十分に発揮できることでしょう。

「いま世界のどのチームにもメジャーリーグや3Ａまたは2Ａの選手たちがいるのに、我々は質の低いチームと対抗戦をやっている。その後、それが大会であらわれる。代表チームのスカウティングのシステムを変える必要がある。我々は情報なしで何度も大会に出ている」

デスパイネの懸念は、そのままキューバ野球の未来に対する警告でもあるように思います。

【名言語録その3】

「デスパ、いいね」

マリーンズ時代からヒーローインタビューのお約束だった「デスパ、いいね」のセリフですが、ホークスでは松田宣浩からの提案で福岡バージョンの「デスパ、いいばい」と言うように勧められました。

マリーンズで家族が来日する前は、夜はビールを飲みながらプレイステーションに没頭していたそうで、レーシングにシューティングやアクション、そしてもちろん野球ゲームもプレーしていました。

野球も生活もすぐ日本に順応したデスパイネですが、実は2010年の世界大学野球選手権でキューバ代表として来日しています。日本代表のメンバーには斎藤佑樹や菅野智之などがいました。キューバは決勝でアメリカと対戦。延長10回裏にデスパイネの逆転サヨナラスリーランホームランで、見事に優勝し、彼は大会ＭＶＰに輝いています。

そんな縁もあったデスパイネは日本に短期間でアジャスト出来た理由について「日本人選手はみんな一生懸命に練習をしますし、努力家で研究熱心。彼らからたくさんのことを学び、成長できた」からと答えています。

2022年の6月10日にはキューバ、メキシコ、日本での通算安打数が2000本に到達。「とてもうれしいですし、長い間野球をやってきた結果だと思う」と話していました。決して平坦な道のりではなかった筈ですが、素晴らしい記録だと思います。

38歳となった2024年もキューバ国内リーグでプレーしていますが、息子のアルフレド・デスパイネ・ジュニアもＵ12のキューバ代表チームではキャプテンを務める逸材で、もしかしたら親子でのプレーが見られる日が来るかもしれません。